私が神戸大学から群馬大学に赴任したのは 2011年5 月でした。当時、形成外科は群馬大学医学部附属病院の標榜診療科にはなく、歯科口腔外科(横尾 聡教授)の一員として赴任しました。横尾聡教授、前外科診療センター長の桑野博行教授、現センター長の調憲教授をはじめ様々な科の先生方の御協力のもと、2016年4 月に附属病院の独立診療科として標榜されました。
乳房の再建手術を希望する乳がん患者の女性の中には、「孫と一緒にお風呂に入りたい」「温泉旅行に出掛けたい」と動機を話されることがあります。医学が進歩して助かる命が増える中、機能回復やQOL(生活の質)の向上は高齢社会の中で今後さらに重要視されるはずです。形成外科の治療対象は特定の臓器の病気ではなく、全身(体表)のあらゆる部位の異常や形態変化です。特に大学病院として力を入れていきたい柱は三つ、
1.(乳がんや口腔がんなど)がん切除後の再建手術
2.けがや手術後の傷痕のゆがみやひきつれによる症状の改善
3.形成外科の医学生教育と群馬県への普及
です。2011年に神戸大から群馬大に移り、これまでも乳房再建などの手術をしてきましたが、本年度から学生の教育にもしっかり取り組めるようになりました。講義実習では微小血管や神経をつないだり、傷痕が残りにくい縫合の手技なども教えます。
“見た目を改善する診療科”ですが、実は見た目を治すことで機能の回復にもつながります。悩んでいることがあったら一度、相談に来てください。乳房再建術などは今後のがん治療の計画を踏まえて方針を決めるので主治医の紹介状が必要です。がんの治療後でなければ紹介状が無くても受診できます。ただし、初診時に選定療養費が別途かかります。また、自由診療の美容外科は行っていません。
対象疾患の多くはがんの標準治療のように定まった治療法があるわけではありません。安心安全な医療を提供するためにも事前に医師と患者がよく話し合って治療方針を決めることが大切です。傷痕は完全には元通りになりませんし、痛みなどの症状だけを取り除きたいならば手術せずに治す手段もあります。また、乳房再建材料の「自家組織」と「人工乳房」には両方に利点と欠点があります。生命を救うことを最優先する医療現場で、その命を大切にしつつ、患者さんが幸福感を得られる人生を送るための医療を提供することが私たち形成外科医の使命だと考えています。
形成外科で扱う疾患
ケガ・きずあと (けが・やけど・ケロイド・とこずれなど)
生まれつきの病気 (口唇口蓋裂・合指症など)
腫瘍 (乳房再建・ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)
その他 (顔面神経麻痺・リンパ浮腫など)
美容外科 (重瞼術・豊胸術など)
当院の特徴
☆下記の診療は特にチーム医療を行っています。
けが・きずあと
①やけど (救急科・皮膚科)
➁難治性足潰瘍 (循環器内科・心臓血管外科・人工透析センター・内分泌糖尿病内科・リハビリテーション部)
③ケロイド (放射線治療科)
腫瘍
①頭頸部のがんに対する再建 (歯科口腔顎顔面外科・耳鼻咽喉科)
➁乳がん術後の乳房再建 (乳腺内分泌外科)
その他
①リンパ浮腫 (総合診療科)